語学と私 (part2)

 おことわり

hsjoihs.hatenablog.com

 ↑ の続編です。読んでない人は先に読んでおくことをおすすめします。

 

本文

ということで久々に語学というものを真面目にやりました。私という人間は根が不真面目でございますので、「語学を真面目にやる」というのは「真面目にやらないと不利益がそこそこ発生する環境に、置かなくてもいいのに自らを置く」とだいたい同義です。結果としてどうなったかはまあ察せている方もいるかと思いますが、「真面目にやらないと不利益がちょっと発生する環境に、置かなくてもいいのに自らを置いたが、やっぱり真面目にはやらなかったので不利益がちょっと発生した」というオチになるわけです。

 

じゃあナワトル語の授業を履修したことを後悔しているかというと、もう全くもってそんなことはありません。もともと私は後悔というものをする頻度が極端に低い人間ではありますがそれとは関係なく、むしろ「ナワトル語の授業を日本にいながら受ける」という非常に珍しい体験をすることができたというだけでもスタンフォード大学に所属した甲斐があったとまで感じています。

 

ナワトル語について

そもそも「ナワトル語」と聞いてピンとくる方ばかりではない(というか、どう考えてもピンと来ない方ばかりである)(と思ったがわざわざこんなタイトルのブログを読む人なら知ってるのが普通かもしれない)(とも思うがまあ一応書いておこう)と思うので概略だけでも。

 

ナワトル語の授業を受けている旨を口頭(こんなご時世なのでほとんどが Discord か VRChat、たまに Zoom)で言及する際に、テンプレ会話パターンとして使っていたのは以下の通り。

 

単語帳を回す私「ニクキ・シキーシティ・セー・ノテシポホ。」*1

人「なにやってるんですか」

私「ナワトル語の単語帳回してます」

人「ナワトル語ってなんですか」

私「アステカ帝国公用語*2で、今でも160万人ぐらいが話してるみたいですね」

人「はえー」

 

まあ雑談であまり長々と語ってもしょうがないわけで、これぐらいの簡潔さでまとめて話すことになるわけですね。アステカ帝国って単語はなんだかんだ皆さんご存知なのできれいにまとまる。

 

さて、ブログというのは対話とは違って私が一方的に長々と語る場なので、もうちょい書くことにしましょう。

 

まず、皆さん「アステカ」と「マヤ」の違いって分かります?そんなあなたにおすすめなのが ↓ の動画。(私はこの動画見るまで全然区別ついてませんでした。)「英語動画見るのつらい」って人は冒頭の20秒だけでも見といてください。

 

www.youtube.com

ナワトル語はこの「アステカ」の方です。

 

ナワトル語と私

ナワトル語について最初に目にしたのは、多分「ナワトル語には tl として綴られる音があって、こいつがおもしろい」みたいな話が日本語版 Wikipedia に書いてあったのを見たときな気がします(聞いてみたい方は、 tlahtlaniliztli. | Nahuatl Dictionary とかの音声を聞いてみるといいと思います)。

 

なお、実際にこれを発音してみたい方は、

 

  1. まず『タ』を言おうとし、寸止めする
  2. すると舌が口の上部(上の前歯の周辺)にくっつく。
  3. さて、普通『タ』を言うときは、このあと「下顎が下がることによって口が開き、舌もそれについていって口の下部に行く」という動きをするはずである(それを意識したことはないかもしれないが)。
  4. しかしながら、今回は舌の先端を意地でも上前歯から外さずに息を吐こうとしてみる。そうやって一瞬息が吐けたら、そのあとは意地を張るのをやめ、普通に『タ』を言うときの挙動をしてみる

をやると、だいぶいい感じの tla が言えると思います。*3

 

その次に目にしたのは多分国際言語学オリンピック2015(ブルガリア大会)に出場したときのことで、 ナワトル語の数詞体系に関する問題とかをブルガリアに行って解きました。(問題文はここにあります。)(あ、上記問題をネタバレ無しで解いてみたいという方は、このブログを読み進める前に解いておいてください。後でネタバレ書きますので。)

 

それから数年が過ぎ、私はTwitterを始め、2017年12月にはこんなツイートをRTしていたようです。

 
さらに数年が経ったある日(具体的には2019年8月18日)のこと。


というツイートが流れてきて、さっそく Launey, M., & Mackay, C. S. (2011). An introduction to classical Nahuatl. New York: Cambridge University Press. の Kindle版を買いました。

 

かなしいことに、Kindle版は組版がつらいことになっており、読むに耐えませんでした。

 

ということで、 2019年10月には紙版も購入。

 

それと並行して、創作自然言語などを行う集まりがスタンフォード大学に存在することを知り、参加。 *4



すると、まあやはり言語の話で盛り上がるわけでして。

この回だったかそれ以降の回だったかは覚えていませんが、手元にあった言語周りの本を全部(当然ナワトル語の文法書を含む)カバンに詰めて持参したりして場を盛り上げたりもしたはずです(「あれ、受身ってどう表現するの?」みたいな質問にその場で開いて答えることができてたのしかったです)。

 

さて、その後の何らかのタイミングで文法書の全ページを眺める作業(この行為に「読む」という動詞を用いていないことに注意。つまり眺めただけで読了後になんも覚えていない様を表す。)を行ったことは記憶にあるのですが、いつだったのかを一切覚えていません。2020年3月からロックダウンして、2020年6月に日本にこっそり帰ってきたのは確実だけれど、読了は日本に帰ってきてからだったかなぁ~?んー、自信がないです。

 

それはともかく、文法書の全ページを眺める作業を行った以上、せっかくナワトル語が開講されているならそれを履修するしかないわなということで、

hsjoihs.hatenablog.com

 

前回 ↑ 書いたように、ナワトル語の授業を取ることにしてみました。

前置きが長くなりすぎた

えーと、この記事はもともと「IDIEZという(比較的思想の強い)団体が提供するナワトル語教育を2学期間受けた感想」というタイトルにしようと思っていたんですが、IDIEZという語すら登場せず4000文字に達しようとしているので、一旦記事を分けます。

*1:「私の友達に会って欲しい」。興味のある方のために書いておくと、Nicnequi xiquīxmati cē notequixpoh. は nicnequi /nikneki/ (ニクキ) 【ni-「私が」 + k-「彼・彼女・それを」+ neki「欲する」】、xiquīxmati /šikiːšmati/ (シキーシティ) 【ši-「あなたが~しろ」 + k-「彼・彼女・それを」+ īšmati「~と会う」】、cē /seː/ (セー)「ひとつの」、notequixpoh /notekišpoh/ (ノテシポホ) 【no-「私の」 + tekišpoh「友達」 】から構成される。

*2: lingua franca という表現は一般人に通じるわけないので

*3:「あれ? [t͡ɬ] ってそんな音なの?」と疑問に思った方のために、ツイートを一つ貼っておきます。

*4:普通「人工言語」と呼ばれるタイプの創作活動。↓ に従い、ここでは「創作自然言語」表記を用いる。